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原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.4〜「このままが良いよね」から抜け出し、変化を受け入れる~「現状維持バイアス」に気づくこと~

2022.09.03 投稿

 やっと、朝晩涼しくなり始め、秋の足音が近づいてきました。

 私はと言うと、つい先日、とうとう“禁断の果実”を手に入れてしまいました。何が禁断の果実なのかというと、とあるビールのサブスクリプションサービスです。レンタルのビールサーバーと定期的に届くミニ樽で、自宅にいながら本格的なビールを楽しめるという代物。外でビールを楽しめる機会が、以前よりぐっと減ったことを機に検討し始め、このサービスの会員になることを決めました。

 実は、我が家はこの他にウォーターサーバーの定期配送も購入しています。非常に便利なサービスで重宝しているのですが、最近は動画や音楽のみならず、洋服やバッグなどのサブスクリプションサービスも増えてきました。このようなサービスは、一度、契約すると、特段問題がない限り使い続けるので、いつの間にか日常に溶け込み、それが生活の一部となっていくのが特徴の一つでもあります。

サブスクリプションサービス浸透の背景には、「現状維持バイアス」が影響していると言われています。「現状維持バイアス」とは、これまで経験したことがないことを受け入れ難く、変化によるリスクに多大な不安を抱いている状態を表します。しかし、ともすると、私たちは変化によってもたらされるメリットよりもデメリットを恐れることが多いのかもしれません。

 例えば、これまで紙で提出してきた申請書に関して、新たに、電子で申請可能なシステムが導入されたとします。導入する側は良かれと思って始めたわけですが、スタッフからは「これまで紙で申請してきたので、みんなそちらの方が慣れている」、「新しく申請方法を覚えるのが苦手なスタッフもいる」などマイナス面を気にする声が挙がることもあるでしょう。これは、効率化や保存のしやすさといったメリットよりも、新しいシステムを導入することによるデメリットに気持ちが向いている、つまり、「現状維持バイアス」がかかっている状態になります。 

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  では、この「現状維持バイアス」を乗り越えるためには、どうしたら良いのでしょうか。   

 まず、変化によってどのようなことが起こるのか一度、整理してみることをオススメします。書き出してみると、意外とデメリットよりもメリットの方が多かった、ということもあるからです。

 また、急激な変化は、より抵抗感を抱きやすくなります。日頃、全く運動をしていない人が「今日から毎朝、10キロ走ろう!」と意気込むより、徐々に距離を伸ばしていく方が長続きできるのと同じく、仕事においても、少しずつ変化を積み重ねていくように馴染んでいくことで、不安や抵抗感を払拭しやすくなります。

 今回は、サブスクリプションサービスから「現状維持バイアス」の話をさせていただきました。かくいう私も、変化に不安を感じて後ろ向きな気持ちになることがあります。でも、そのような時こそ、「これを楽しもう」と気持ちを切り替えて取り組むように心がけることが大事なのだと思います。

     

■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー

北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。