原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.8 ~自己開示を始めよう〜相手との距離を縮めるきっかけに〜
年が明け、新しい一年が始まりました。皆さんは年末年始、どのように過ごされましたか。私自身は、ここ数年、地元に帰ることなく、ゆっくりと過ごしています。ただ、毎年恒例となっているのが、神社での新年祈祷です。大きな理由があって始めたわけではないのですが、祈祷をしなかった年に限って何かあるかもしれない・・・と思う気持ちもあり、もう何年も続いている我が家の行事です。
神社での帰り道、小学校5年生になる長女に「今年は何かやりたいことある?」と聞くと、返ってきた言葉が「個人情報だから」と(笑)。思わず、「そうだよね、ごめん・・・」としか言えなかったわけですが、この個人情報と言う言葉、最近、よく耳にするようになりましたね。ルールも以前より厳しくなってきているわけですが、見方を変えれば、相手との関係性を築くために自分自身の個人情報を上手に使うこともできると思いませんか。
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初対面の人と話すとき、相手の様子を伺いながら発する言葉や態度に気をつけて会話を進めることが多いかと思います。ところが、緊張感のある会話の中で、出身地や住んでいる場所が同じなど、共通点が見つかった途端に緊張がほぐれ、一気に距離が縮まったと言う経験はないでしょうか。その事実を偶然知ったという場合もあるかもしれませんが、意図的にこちら側から自分の生い立ちや趣味、過去の失敗といったプライベート情報を伝える場面を作る、つまり自己開示をすることで、相手との距離感が縮まり、良好なコミュニケーションづくりに一役買ってくれます。
とは言え、初対面の人にいきなり自己開示をすることはとてもハードルが高いものです。自己開示をする前には、まず、相手との会話の量を増やしていきましょう。それほど大げさなものではなく、例えば、「おはよう」「よろしくね」など短い言葉で構いません。言うならば、サザエさんに登場するサブちゃんが三河屋さんの御用聞きとして裏口から「こんにちは、三河屋です」とよく顔を出している光景と似ているかもしれません。よく顔を出しているからこそ親しみもわきますし、必要な情報も集まってくると言う利点も得られます。
少し話が横にそれましたが、相手との会話の量が増えてきたら、今度は自分のプライベート情報を織り交ぜて会話をするように心がけます。自己開示をすることで、「自分と同じ経験をしているんだ」「そんな苦労をしているなんて」「もしかしたら、同じ大学出身かもしれない」など、お互いの共通点を見つけることができます。また、相手は「こんなことまで話してくれるなんて」と言う驚きとともに、「自分は信頼されている」と感じるようにもなります。それはやがて、相手の自己開示を呼ぶとともに、信頼関係の構築にもつながっていくことでしょう。
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自己開示というと、プライベート情報ばかりを伝えなくてはいけないと思いがちですが、例えば、「明日、会議で発表するんだけど、実は、すごく緊張していて・・・」「今日の夜、放送しているテレビドラマが好きで、楽しみにしているんだよね」など、ちょっとした気持ちを添えるだけでも「あの人でも緊張するんだ」「好きなテレビドラマが一緒!」など親近感を抱いてもらうきっかけになり得ます。加えて、リーダーや管理職の人に試して欲しいのが、自分の苦手や弱み、コンプレックスを開示していくことです。敢えて、弱い部分を見せることで、リーダーは決して万能ではなく、メンバー一人一人の力を必要としていることを暗に伝えてくれることと思います。
仕事をするにあたり、人との関わりは避けては通れません。だからこそ、自ら働きかけることで、心地よい人間関係づくりを進めていけたら良いと感じる今日この頃です。
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。