原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.10 〜相手が快く動いてくれる言い換えの力〜
皆さんは、ヨシタケシンスケという方をご存知でしょうか。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)などの絵本で知られている作家で、昨年は全国で展覧会が開かれていたようです。お子さんがいらっしゃる方は、その名前に馴染みがあるかもしれませんね。
かくいう私も、子どもに読んで欲しい絵本の一つとして購入していました。ヨシタケシンスケさんの絵本は、日々の出来事を印象深いイラストで表現されているので、「わかる!」「よくあるよね!」と共感するものが多数あり、子どものみならず大人でも楽しめるものばかりなので、とても気に入っています。
ここ最近はオンラインで書籍を買うことが増え、色々と探していたところ、ちょうど『あつかったら ぬげばいい』(株式会社白泉社)という絵本のタイトルに惹かれて思わず、ポチッと購入してしまいました。子どもは絵本を読む年代から遠ざかってしまったので、自分用に購入です。
手に取られた方はわかるかと思いますが、ヨシタケシンスケさんの絵本は比較的、大柄。しかし、今回、購入した絵本は15センチ四方と小さめでした。文庫本より少し大きいくらいですね。
面白いなとタイトルに惹かれて手にしたものの、その内容は、子ども向けというより大人向けで、「確かにそうかもしれない」と感じさせられるものばかりでした。
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一部をご紹介すると、「だれもきずつけたくなかったら じょうずなうそをつけばいい」と書かれている一節があります。このページに描かれているイラストは女子中高生だったので、思春期の成長過程で遭遇する人間関係の難しさを表現しているのだと思われます。ですが、どのような年代であっても、相手を気遣う姿勢は良い人間関係をもたらすとともに、心の安定を保ってくれるのではないでしょうか。ストレートな物言いをしなければいけない場面もありますが、それと同じくらい、やんわりと伝える力が重要なのではないかと感じた次第です。
例えば、Aさんに、今月末が期限の書類を提出して欲しい場合、どのように伝えたら良いでしょうか。もちろん、そのまま
「Aさん、今月末が締め切りなので、必ず提出してください。」
と伝えても良いでしょう。しかし、少し言い方を変えて、
「Aさんは、締め切りに遅れないと評判ですよ。今回も、よろしくお願いします。」
と伝えてみるとどうでしょうか。自分がAさんに抱いている期待を表しつつ、相手を立てて気持ちよく行動してもらうことができるのではないでしょうか。
このように相手を立てながら、こちらの意図を伝える言い回しは、耳触りが良いので職場内外で使うことができます。例えば、少々無理なお願いをする場合に
「困っているから手伝って欲しい。」
「どうしてもお願いしたい。」
と懇願されるよりも
「Bさんの仕事の丁寧さを見込んで、お願いしたい。」
「Cさんの手際の良さを、ぜひ発揮してもらいたい。」
と伝えた方が、気持ちよく引き受けてもらえる可能性も高まると思いませんか。
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コミュニケーションは一方的ではなく双方向。伝えたことを相手が理解して行動してもらわなければ意味がありません。相手が快く、こちらの望む行動を取ってもらうようにするには、ただ伝えるだけではなく、ちょっとした仕掛けが功を奏すると思う今日この頃です。
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。