原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.13~上司でも部下でもない第三者との『ナナメの関係』がもたらしてくれるものとは~
ここ最近、『自己肯定感』という言葉を見かけるようになりました。
自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れること、そして、その受け止める気持ちや感覚」のことを指します。
「私は、あの人よりも仕事ができていないように感じる」
「入職して何年も経つけれど、一向に成長していると思えない」
と感じている場合は、自分を否定的に捉えてネガティブな気持ちになっていることが多く、自己肯定感が低い状態だとされています。
「ありのままの自分を受け入れる」とは、得意なことや長所だけではなく、苦手や短所であっても自分の一部であると認識し、理解することですが、まさに、言うは易く行うは難し。ありのままを受け入れるって難しい!そのような時に活用して欲しいのが、リフレーミングです。リフレーミングとは、ある物事を違う角度で見て、捉え直す考え方です。
例えば、「せっかち」という言葉は一見、短所のように聞こえますが、別の見方をすると「素早く行動できる」と言い換えることもできます。また、同じように「頑固」は、見方を変えると「自分を持っている、芯がある」と捉え直すことができます。自分のよさや持ち味を見つけられずネガティブな気持ちになりやすい人は、このようなリフレーミングを活用してみると今よりも前向きに考えられるようになるかもしれません。
しかし、そうは言っても、長年付き合ってきた自分の思考を変えることは非常に難しいものです。そのようなときは、「ナナメの関係」に注目してみてはいかがでしょうか。
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「ナナメの関係」は、学校現場でここ数年よく使われるようになってきた言葉です。親や教師のような縦の関係や同級生といった横の関係ではない、第三者との関係を指しています。普段、接していない第三者が介入することで、新しい考えや価値観に触れ、子どもたちの視野が広がるきっかけ作りとなり得るというものです。これを職場に当てはめるのであれば、第三者は上司や部下、部署の同僚ではなく、他部署や他の病院、施設に所属している人、全く業種や職種が異なる人、そして、外部のカウンセラー等が該当するでしょう。
職場内で近しい間柄であれば、つい、「こうした方がよいのではないか」とアドバイスをしてしまいますし、上司部下であれば上下の力の関係が生じやすくなってしまいます。ですが、普段、接していないからこそ素直に自分を曝け出すことができ、悩みや不安、今後の夢や期待などを素直に伝えることができるかもしれません。さらに、話を聴く側も、まっさらな気持ちで聞くことができるので、「すごいですね」「そういうよいところもあるのですね」など、相手を認める言葉を伝えやすくなります。
自分を肯定してくれる言葉を他者から聞くことで、「自分もできるかもしれない」「自分にはこういうよいところがあるんだ」「今の自分が好きになった」と気付くきっかけとなり、自己肯定感の向上へとつなげることができます。
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ここまで、ナナメの関係のよさをお伝えしてきましたが、「第三者の介入は効果的ではあるものの、なかなか話せる相手が見つけられない」「お互いに認め合い、職場内のコミュニケーションを少しでもよくしたい」ときに役立つ簡単なワークショップをご紹介します。それは、「とにかく、お互いを褒める」というものです。
ペアになって、お互い1分間、相手を褒める言葉を紙に書き出します。容姿でも性格でも仕事ぶりでも何でもよいので、とにかくたくさん出してもらうのがコツです。以前、このワークショップを行ったときには、「私服がオシャレ!」という褒め言葉を伝えていた人もいました。それでもよいのです。
そして、1分経過した後に、それぞれが書き出した褒め言葉を相手に全て伝えます。言われた側は照れくさい反面、決して嫌な気持ちにはならないですし、褒め言葉を伝える側も「改めて見ると、この人にはこんなところがあったんだ!」と、相手のよさを知るきっかけにもなります。仕事をしているときとは違う角度から見ることができるわけです。 近年の若年層は、自己肯定感が低いと言われることが多くなってきています。相手の言葉の端々からそう感じることがあったなら、ぜひ、相手のよいところや持ち味に目を向けて、それを言葉に出してみることを心がけてみてください。
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。