原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.2~価値観のズレは相手のことを知るチャンス~
先日、大阪市内の地下鉄に乗ろうと切符売り場で路線図を眺めていたところ、不意に横から声をかけられました。「これ、もう使わないからあげるよ。」と。
振り返ると、父親の年齢より少し若いくらいの男性が、大阪市内で使える1日乗車券を2枚手にして、ニコニコしているのです。ちょうど、私が小学生の娘を連れて切符を買おうとしていたので、親切心で渡してくれようとしたのでしょう。
私は、今でこそ関西に住んで7年ほど経ちますが、出身は北海道、関東にも数年住んでいたことがあります。異なる土地に住んだ経験を考えても、関西では先ほどのような出来事に遭遇する率が高いように感じられます。
− 地下鉄に子供連れで乗車していると、飴をくれる −
− 空港で順番待ちをしている時、「もう我慢できない。」と話す子供の声がきっかけで、あれよあれよと言う間に順番待ちの最前列になる −
など、出来事をあげればキリがありません。
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皆さんは、このような出来事に遭遇した時、どう感じますか。
「とっても助かる!」、「素直に嬉しい」、「知らない人から声をかけられると、戸惑ってしまう」など、色々な意見があることと思います。
近年、世代間ギャップがリーダーの悩みとして取り上げられることが増えてきましたが、まさに前述した出来事は、地域や育ってきた環境による価値観の違いが表れていると言っても過言ではありません。
自分自身と同じ価値観を持つコピーロボットは皆無であるため、どうしても、違和感を感じる瞬間というのは少なからずあるものです。
「それは違うよね」、「話が全然合わない」のように否定的になると、相手のことを知らず知らずのうちにシャットダウンしてしまいがちです。
そこで、私は違和感を感じた時は、敢えて「どうして、そう思ったのか?」と掘り下げてみることにしています。その人が大切にしている価値観が生まれるまでには、ストーリーがあります。
例えば、先ほど例にあげた空港での話であれば、「自分も子育てをしている時に、大変だったから」とか、「同じようなことをしてもらったことがあり、すごく嬉しかったから」といった経験からだったり、「困っている人がいたら、親切にするべきだ」という親からの教えが価値観の背景にあるからだったりするからかもしれません。
反対に、「急に声をかけられて怖い思いをした」、「余計なことしないで欲しいと苦情を受けたことがある」などの経験があれば、順番を譲ろうという気持ちにはなれないかもしれません。
私たちは、何かしらの出来事に遭遇した時、そこには感情が生まれます。その感情がプラスであれば、大切にしたい価値観が生まれやすくなるものです。
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リーダーとして、管理職として全ての人と上手くやっていくことは至難の技かもしれませんが、日頃から良い関係づくりを行なっている方は、相手の価値観やその背景について興味を持っていることが多いように感じられます。もし、相手に苦手意識を抱いているのであれば、相手そのものに興味を持つのではなく、相手が興味を持っていることに興味を持つようにすると良いかもしれません。
また、他人だけではなく、意外と自分自身の価値観に気づいていないことも多いものです。
厚生労働省のサイトに「価値観診断」ができるツールがあります。自分を深く知り、相手との違いを理解することでより良い関係をつくる一助になるかもしれませんので、試してみてはいかがでしょうか。
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。