原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.5〜「無自覚な迷惑行為、どのように対応していますか」
私たちはそれぞれ、育ってきた環境や置かれている状況が違うので、物事に対する考え方や感じ方は多種多様です。とは言え、中には組織やチームの中をかき乱し、悪びれる様子がないという人に出会って苦慮する場合もあるのではないでしょうか。このような場合、かき乱した本人に「迷惑をかけた」という自覚症状がないことも多く、周囲も「言ってもしょうがない」と諦めるケースが少なくありません。今回は、このようなトラブルメーカーになりがちな人の特徴や言動について、少し考えてみたいと思います。
無自覚なまま周囲に迷惑をかけている人の特徴として、「相手の立場に立って物事を考えることができない」ことが挙げられます。「相手の立場に立つ」とは、「自分の意見を押し付けない」「聞き上手である」「先を見据えて考えることができる」と言い換えることもできるでしょう。経験が浅い、相手の意見を聞き入れることができない場合は視野狭窄に陥りやすく、つい、自分の物差しで物事を測ってしまいがちです。
また、「自分は優秀だ」「絶対に失敗しない」など自分の力を過信していることも多いため、経験がない仕事や一人では難しい仕事であっても安易に引き受けてしまう傾向があります。土壇場になってから「これ以上は無理」と匙を投げてしまうので、取り返しのつかない状況になってしまうこともしばしばです。
自分の言動に対して指摘を受けた場合であっても、プライドの高さ故に受け入れることできないことも多く見受けられます。自分自身を客観的に見つめることができず、時には、指摘に対して感情的な受け答えに繋がることもあるので、周囲とのコミュニケーションがうまくいかず、離職することも考えられます。
では、無自覚なまま周囲に迷惑をかけている人に対して、どのような対応をしたら良いのでしょうか。その言動が、組織やチームの運営に支障をきたしている場合は、本人に「迷惑をかけている」という自覚を持ってもらう必要があります。この時、できるだけ具体的に「どのような言動が迷惑となっているのか」「結果として、どのような事態に陥ってしまったのか」まで伝えなければ、相手の自覚を促すことはできません。そして、伝える時には、決して感情的ではなく、あくまで冷静に話をすることも心がけたいポイントの一つです。
また、仕事を進めるにあたり、自分自身の判断で途中経過の報告を怠らないようにしてもらうことも大切です。「きっと大丈夫だろう」「これくらい報告しなくても良いだろう」と考えて進めてしまっては、起こった問題に気づかず、取り返しのつかないことになってしまうことも考えられます。報告・連絡・相談をしっかりと行い、最後まで責任を持って完遂する癖を身につけるような働きかけもしたいものです。
今回は、組織やチームにおいて無自覚な迷惑行為をしている人への対応についてお伝えしました。私は、メンバーの育成や対応はどこか子育てと似ていると思う部分があります。「やってみて、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉がありますが、人を育て正しく導くには寛大さや丁寧さも持ち合わせていなければならないと感じる今日この頃です。
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。