原麻衣子のコラム「ヒトコトワリ」vol.12〜行動が変わるキッカケと感情が動く瞬間〜
私が有している国家資格キャリアコンサルタントは、取得してから5年ごとに一定以上の講習を受講し、更新する必要があります。私自身、次回の更新まで時間はあるものの、余裕のあるうちに受講しておこうと、少しずつ講習を受け始めているところです。
一口に講習と言っても、その内容は多岐に渡ります。基本的なカウンセリングの技能からメンタルヘルス、がん治療と就労支援など様々です。先日、私が受講に際して取り組んでいた事前課題は、自分自身のこれまでを掘り下げる内容でした。
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幼少期からこれまでを5〜7年ごとに区切り、それぞれ印象深かった出来事を複数列挙してその出来事にタイトルをつけていきます。タイトルづけもさることながら、印象を受けた出来事を思い返す過程においては、よいことばかりではなく、嫌な思い出とも向き合わなくてはならないので、多少なりとも骨が折れる時間ではありました。
自分の記憶を辿りながら当時の感情に触れ、久しぶりに手に取ったのが、『感情は、すぐ脳をジャッジする』という書籍です。
数年前に知人からの勧めで購入したのですが、感情によって行動がどのように変化するのか分かりやすく書かれており、気に入っている本の一つです。
私たちは家族や職場で日常的に行われるコミュニケーションだけではなく、テレビから流れてくるニュースやSNSを通じて得た情報によって、常に小さな感情が生まれては消えていきます。例えば、暑い中の通勤途中、「疲れた、しんどいな」と思うこともあるでしょうし、休日昼下がりのおやつを食べて「ホッとする、幸せだな」と思う瞬間もあるでしょう。
生まれてくる小さな感情をさばきながら過ごすことができているうちは、「感情を上手くコントロールできている」のだと言えます。
しかし、時にはさばき切れず、残った感情を抱えてしまうこともあります。それは往々にして、「自分自身が大事にしている価値観に触れている」「これまでの経験と大きく異なる出来事が起因となっている」のだと思います。つまり、感情が大きく揺れ動いた瞬間です。
仕事を進める上では、感情に左右されすぎないことが大事だと考えています。例えば、やる気に満ち溢れて仕事に取り組む姿勢は素晴らしいことですが、あまりにも急激にやる気やモチベーションを上げすぎると、持続性に乏しく、モチベーションは急激に下がりやすくなります。やがては、仕事に支障をきたしてしまうこともあるからです。
そうは言っても、時には、感情が大きく揺れ動いた瞬間を敢えて作ることも効果的だと考えています。「難しいと思っていた目標を達成することができた」「みんなで一丸となって進めることができた」「実体験を直接、本人から聞く機会を得られた」などです。鮮烈な記憶は、やがて人生を変えるキッカケになり得るかもしれません。
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以前、どこかでお伝えしたかもしれませんが、私が最も好きなキャリアカウンセリングの理論でクランボルツ(1928-2019)の「プランドハプンスタンス理論」があります。「人のキャリアや人生のターニングポイントは、偶然の出来事によって左右される」「当初は、予想しなかった出来事によって興味関心が喚起され、成長する」という考え方です。
自分自身のこれまでを振り返る課題とこれらの書籍に向き合いながら、自分の価値観や考え方、就職や転職のキッカケはきっと、大きく感情が動いた瞬間を経ていたのだろうと感じた次第です。
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【参考文献】
佐渡島康平、石川善樹 著.『感情は、すぐ脳をジャックする』.株式会社 学研プラス.2021年
木村周 著.『キャリアコンサルティング理論と実際』.一般社団法人 雇用問題研究会.平成22年
■執筆:原麻衣子
株式会社エイドドア人事アドバイザー
北海道札幌市出身。北海道大学卒。大学卒業後、外資系製薬会社を経て、公的病院で人事労務等を担当。その後、病院、クリニック、介護施設を中心に人事制度や評価制度の導入・運用コンサルティングや研修講師として活動している。