医療法人社団宇部興産中央病院 澤村 健一さん
山口県宇部市にある医療法人社団宇部興産中央病院の回復期病棟副主任の澤村健一さんにインタビューしました。
元々は宇部興産の企業立病院でしたが、現在は医療法人化し、ますます地域での重要な役割になっています。急性期から在宅医療までの機能を持ち、その中での回復期病棟でセラピストリーダーとしてご活躍の澤村さんから、病院の特長も含め、お話を伺いました。
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◎澤村さんの所属の病院はこちら
医療法人社団宇部興産中央病院
◎澤村さんのプロフィール
<ご略歴>
2001年 名城大学商学部商学科卒業
2007年 下関リハビリテーション学院卒業(現:下関看護リハビリテーション学校)
同年 宇部興産中央病院入職
2015年 同病院 副主任
大学を卒業後、1年間 フリーターを経て、一般企業に入社。その後、理学療法士を目指し、専門学校へ入学いたしました。
<主な資格>
2016年 介護予防推進リーダー、地域包括ケア推進リーダー、協会指定管理者(上級)
2017年 回復期リハビリテーション病棟協会セラピストマネジャー
認定理学療法士(地域理学療法)
2018年 認定理学療法士(管理・運営)
2019年 認定理学療法士(臨床教育)
2020年 フレイル予防人材育成研修プログラム
◎所属の病院、法人のご紹介をお願いいたします。
急性期がメインの病院ですが、地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟を設け、急性期の入院治療から在宅支援までを一貫して提供している病院です。予防の視点から、健診センターも備えています。
リハビリテーション室は、急性期グループは内科、外科、脳外科、整形外科、スポーツリハビリに分かれており、地域包括ケアグループ、回復期グループで構成されています。当院のリハビリテーション室の特徴は、スポーツリハビリと内科グループの心臓リハビリテーションです。
心臓リハビリテーションは、内科(循環器科)の患者さんがメインとなります。当院では、心肺運動負荷試験(CPX)を導入し、心疾患のある方に対して、どのくらいの運動負荷をかけてよいのか、自転車をこいでもらいながら、適切な運動量を計算しています。
心臓リハビリテーションを行うことで、心疾患による入院リスクが下がったり、生活の質が改善し、より快適な生活が過ごすことができるようになります。
当院では、入院中の患者さんだけでなく、退院後も外来通院で心臓リハビリテーションを行っております。
スポーツリハビリテーションは、私も数回、入院してお世話になった経験があるのですが、基本的には競技復帰が目的です。部活をやっている学生や社会人でスポーツをやっている方たちに向けて、入院から外来を通じて、競技復帰するまでフォローしており、当院でも、力を入れている部門の一つです。
「アスレチックトレーナー」という資格をもったスタッフが配属されており、よりスポーツに特化したリハビリテーションを行う場となっています。スポーツリハビリテーションは、サッカーやフットサル、バスケットボール、バレーボールといった競技の方が多いですね。
◎地域医療の視点での貴院の役割はいかがでしょうか。
当院は山口県宇部市にありますが、大学病院も同じく宇部市にあり、そこが最も急性期的な役割を担っています。当院は、その次の急性期としての役割を担っているのではないでしょうか。どちらかと言うと、市民病院のような働きになりますね。
◎澤村さんが、理学療法士になられた動機、きっかけを教えてください。
祖母が入院したことで、リハビリというものを何となく知ったのですが、その時には理学療法士と作業療法士の違いも全くわからず、リハビリについての認識だけでした。
理学療法士に就く前、私は民間企業の営業をしていました。
大学の商学部を卒業して、就職活動していたのですがなかなか決まらず、結局、行きたいところに行くことができませんでした。そして、1年間フリーターをした後に、民間企業に就職が決まり、2年ほど勤めました。
私自身、長らくサッカーをしていたのですが、一般企業に在籍していた頃に手のケガをして通院治療をすることになりました。その時に、「これが、リハビリなんだ」、「これが、理学療法士なんだ」とその存在を間近に見たことが、理学療法士を目指したきっかけです。
正直なところ、一般企業に在籍していた時はモヤモヤしながら仕事をしていたのですが、このタイミングでケガをして理学療法士という仕事を知り、「こんな仕事もあるんだ」と思っていました。すると、私が担当していた営業のエリアにリハビリの学校ができるという広告が出ているのを見かけました。そして、オープンキャンパスに参加し、色々と調べていく中で、その方向へ進んでいったという感じになります。2004年のことです。26歳にして、専門学校に入学しました。
実は、私たちの世代は、大学へ一度行って社会人を経験し、それを辞めて療法士になられた方が多いようです。
◎リーダー(副主任)になりたてのとき、壁にぶつかったこと、それをどのように克服したのかをお教えください。
回復期病棟のグループリーダーになる前は、私よりも経験年数が上の先輩がいたのですが、その方たちは異動されてしまい、結果として、そのときの立場上、私が回復期のグループリーダーに任命されました。当時は、組織的に役職の立場や役割の条件等が明確にされておらず、なんとなくリーダーをしているという感じでした。
リーダーとして何をしてよいのかがわからなかったですし、特段、明文化されたものもなかったので、時間が過ぎていくうちに不安を感じるようになりました。日々、患者さんと向き合うだけでいいのかと思い、色々な勉強会へ参加しているうちに、回復期リハビリテーション病棟協会のセラピストマネジャーという存在を知りました。
そうは言っても、時間もお金もかかる研修ですし、どうすれば受講できるのかなど疑問に感じながら日々を過ごしていたのですが、既に受講されている山口県内の方にコンタクトを取って話を聞きに行くなどしていました。そして、ついに面談の時に上司へ相談したことがきっかけでセラピストマネジャーの研修に参加することができ、結果的にはそこが回復期のことを体系的に学べる機会となったり、全国各地に同じ志をもった仲間をもつことができました。マネジメントについても初めて学ぶことができ、それがリーダーとしての契機になったのだと思います。
◎澤村様がリーダーとして活動するとき、軸としていること、大事にしていることがあればお教えください。
病院は看護師、医師、介護士、社会福祉士や薬剤師、リハビリだけでも3職種いますし、多職種で成り立っているので、全体のバランスというか最適化が必要だと思っています。つまり、自分の部署だけを一番に考えず、他部署のことも考えて行動することを常々気を付けています。
具体的には、看護師さんに「(患者さんを)こういう感じで歩かせてくださいね」と言っても、看護師さんは看護の仕事やそのほかの対応で忙しいので、なかなか重度の患者さんと一緒に介助歩行してもらうことにリスクがあったり、時間的な制約があります。また、「(患者さんには)こういう環境でやってくださいね」と、リハビリとして様々な患者さんの活動を支援したいのですが、看護師さんのことを考えるとこちらが押し付ける感じにもなるので、時間帯や頻度は、病棟スタッフ目線で考えるなどしています。
◎リーダーとして、これだけは身に着けておいたほうがよい、経験しておいた方がよいと思うことをお教えください。
失敗から多くのことを学べるので、成功経験だけではいけないのかなと思っています。
また、リハビリは対人の仕事です。
患者さんも人ですし、スタッフも職種間の連携など常に人の対応が必要となるので、コミュニケーションの取り方や頻度が大切ですよね。
話をする、顔を見る頻度が上がるだけでも印象は変わりますので、苦手意識を抱いている人であっても積極的に話しかけるようにしています。
やはり、できるだけよい環境で仕事をしたいですし、そういう意味でもコミュニケーションの取り方は身につけておいたほうがよいと思っています。
◎澤村さんのリーダーとしてのお取組みとして、新人教育プログラムを構築したと伺っております。その運用はいかがですか。
2020年度は、理学療法の部門に3人の新入職員が入りまして、以前、作った新人教育のチェックリストを活用しました。
チェックリスト作成当初は、私が配属されている回復期グループだけで活用していましたが、現在は、回復期以外のグループにも配属がありましたので、そのグループでもチェックリストを活用して新人教育にあたっています。また、項目も部門によって必要なものや特異性がありますので、ブラッシュアップをしながら、不定期ではありますがフィードバックの話し合いをしつつ動かしているところです。
これまでは、そういうものが全くなかったのですが、今後は新人だけではなく、部門ローテーションの時も活用できたらよいかもしれないという話も出ています。新人の配属がない部署でも異動してきたスタッフに活用できるように試行中です。
◎それぞれの経験年数に応じての育成という考えの中で、プランなどお聞かせいただけますでしょうか。
私の中では、看護師さんのようにラダーのようなものが必要だと思っています。
なかなか、定期的に新入職員が入職してこないこともあって、着手しにくいところではありますが・・・。
また、ここ数年の新入職員はチェックリストを使って教育されていますので、先輩にあたる人たちにも何かしら目安となるものが必要だと思います。当院のリハビリテーション室は、中堅からベテランと言われるような経験年数が長いスタッフが多くいますので、振り返る機会というか、見える化はしたいですよね。
時間はかかりますが、今回のチェックリストも何とか展開できましたので、次のステップとして時間をかけ、ゆっくりとでも作れたらとは思っています。
◎これからのご自身のキャリアデザインをめざしたいことがあればお教えください。
自部署のことについて、徐々にでも形にできればよいと思っています。
また、私はグループリーダーの役割もあるため、スタッフよりも臨床の場は少なめではありますが、休みのスタッフが多い時などは、患者さんとしっかり向き合うようにしています。
◎最後に、自分を元気にしたいとき、どんなことをされていますか。
これまでサッカーやフットサルを長くしてきましたが、最近は怪我が多く、引退気味です。3、4か月に一度顔を出す程度ですが、メンバーと話をしたり、体を動かしたりすることが元気になれる場所でしょうか。幼稚園から一緒に過ごしてきたメンバーも多くいますので、気兼ねなく接することができます。
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【インタビュー後記】
インタビューを終えて、澤村さんからひとこと。「こんな内容でインタビューになりますか」と。
いえいえ、セラピストになられたきかっけもしっかりとした動機があり、それが今の患者さんへの向き合い方、メンバーや他職種への向き合い方にも大きく影響していると感じました。また、新人教育プログラム開発では、当時その必要性を伺っており、現在こうして運用できていることが嬉しく思いました。
サッカーでのケガから始まり、理学療法士の道へ。きっと長年のサッカーでのチーム活動も今のチーム運営にいい影響が及んでいるんですね。
ますますのご活躍を期待しています☆
澤村さん、このたびはインタビューに応じてくだいましてありがとうございました(^^/