Webサイトオープン記念インタビュー 上尾中央医科グループ総局長 久保田 巧氏
「セラピストリーダーズアカデミー」Webサイトオープンを記念して、一般社団法人上尾中央医科グループ協議会総局長の久保田巧氏にお話を伺いました。
多くの病院・施設を運営する本部のトップとして、NPO法人日本医師事務作業補助研究会 顧問としてご活躍の久保田さん。上尾中央医科グループでお取組みの組織運営や教育体制など伺ってみました。
一般社団法人上尾中央医科グループ協議会
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◎久保田 巧氏のプロフィール
群馬県出身。上尾中央医科グループに入職
上尾中央総合病院 総務、人事課、医事課
山梨県石和町立病院の民営化(笛吹中央病院150 床)担当室長
グループ本部 経営企画開発室 室長
彩の国東大宮メディカルセンター(東大宮病院:337 床) 事務長
メディカルトピア草加病院(80 床) 事務長
上尾中央総合病院 (733 床) 事務部長 H28~ H30.3~グループ局長兼務
上尾中央医科グループ協議会※1) 総局長
H31.4~ 現在に至る
※1)グループ本部は各病院、施設の包括支援を行っている。この本部にグループのリハ部門を統括するリハビリ部長が在籍している。
《その他の主な団体役員等》
公益社団法人 日本医療機能評価機構 サーベイヤー,NPO法人日本医師事務作業補助研究会 顧問,一般社団法人日本施設基準管理士協会 理事
28病院、21介護老健施設、リハ、看護学校を含む施設を運営する上尾グループ本部の責任者。80床、150床、337床、733床の責任者として病院再生などを含む病院経営に携わる経験。
現在病院・介護の全体マネジメントの傍ら、講演、医療雑誌の執筆なども行う。
◎現在の所属、役割やお立場をお教えいただけますか。
《上尾中央医科グループの紹介》
昭和39年12月に上尾市立病院を引き継ぎ、開院56周年を迎えました。上尾中央医科グループ(以下、「AMG」)は、上尾中央総合病院を基幹病院として埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、茨城県、山梨県、群馬県の1都6県に28病院と21介護老人保健施設等を開設し、地域でのハイレベル・トータルケア(保健・医療・福祉)の提供を目指してまいりました。また、教育を通し地域に貢献するため上尾中央看護専門学校、上尾中央医療専門学校(リハ学校)、横浜中央看護専門学校を開設しています。
セラピスト常勤数 PT1400人 OT690人 ST269人 計2359人(R2.9月末時点)
◎現在のご活動をお教えいただけますか。
グループの病院、介護グループの各施設の健全経営活動に向けた活動支援と職員と組織の成長戦略として活動しています。新型コロナの影響により、医療、介護界を含む多くの企業が組織の存続に不安を感じています。その中でも、成長を続けている組織は多く存在します。
日本は今後、急速に少子化・超高齢化に向かっていきます。その中で高齢者が増えることで安泰だと感じるヘルスワーカーの方がいますが、既に、患者、利用者は選択する目を養いつつあり、これからはますます、医療機関、介護機関ともに選ばれる時代にもなっていきます。成長組織に共通している点は、「良い人材」が集まり、そして、それにより「良い組織風土」が築かれているという点です。 「良い組織風土」とは、共通の目標達成に向け、全職員が一体となって立ち向かっていることです。そして、職員一人ひとりの意識や行動パターンに植え付けられていることです。そのための成長戦略として出来るいろいろな施策や支援を行うことは、本部のトップとしての役目として行っています。
◎久保田さんのお立場から、所属のグループでのセラピストリーダーが現場で抱えているマネジメントの課題、置かれている現状をお教えください。また、その背景にあるものはどのようなことがあるのかもお教えください。
教育システムなどは、セラピストの教育ラダーなどをはじめ、それなりに軌道に乗っています。このシステムは、AMG在籍の5年間でどんな疾患でもリハビリできるセラピスト、後輩教育や学生教育に携わることが出来るセラピストを作り上げるテクニカル育成です。その反面、業務に関する運用やマネジメント、人間関係の調整など、管理職としての基本的業務については、まだまだのように感じます。
その背景として、これはもともとの専門職としての傾向だと思いますが、当グループも、セラピストを目指す人というのは、“職人気質”の人が多くて、患者さんの生活状況を良くすることが生きがいで、管理職を目指したいと思う方が少ないからです。今後、リハビリのチームリーダーや部署リーダーは、提供するリハの質の改善や技術のばらつきを少なくするなどの高い質のリハビリを地域の多くの方へ提供できる体制を描くことができる魅力あるポジションですので、管理職としての魅力ややりがい、喜びを伝えていくと同時にマネジメントの部分の強化も大切と感じています。
◎所属のグループでのセラピストリーダーの育成について、お取り組みのことがあればお教えください。
基本ラダー(多くの病院・施設が5年間で組んでいます)を終了後、多くの方が役職者を目指して、マネジメントラダーに進みます。係長や科長といった管理職になるには、マネジメントラダーにおいて、スキルアップや上司評価、部下評価等が一定の基準を満たさないといけません。
主任候補には、リーダー候補育成研修(リーダーとは、管理とは、について研修やグループワークを行います)、主任昇格後間もない人達には、悩みを共有、解決する主任交流研修会などを行います。
他病院・施設のマネジメントや業務管理などを学ぶためのチャレンジ研修を利用して、勤務扱いで、他病院・施設を訪問して1日業務を見学することも出来ます。
今年は、コロナ禍で実施できませんでしたが、管理職は、毎年、1泊2日で管理や採用活動などについて管理職研修を行います。夕食時の情報交換や交流にも大きな意味があります。
最近はキャリア支援に力を注いでおりまして、キャリア研修として、スタッフにはキャリアビジョンを描くこと(キャリアビジョンシートの記入など)、管理職にはキャリアビジョンを引き出す面接が出来ることを目的とした研修などを行っております。
◎事務部門のプロフェッショナルのお立場から、セラピストリーダーの方々にどのような活躍を期待していらっしゃいますか。 身に着けてほしいスキル、事務部門とのコミュニケーション、組織全体のコミュニケーション(多職種連携)などの視点からお教えいただければと存じます。
〇少子高齢化の中でのセラピストに求められるもの
少子高齢化の中で、在宅医療や予防事業など、病院施設で働くほかに仕事は多岐に渡ってきました。
セラピストとしての強みとして、技術だけでなく、広い知識を生かして、今後のますます強化しなければいけない在宅医療や予防事業などについては、病院・施設の中で、リハ部だけにとどまらず、組織を引っ張っていけるような横断的に活躍できる存在になってほしいと思います。
〇基本的な管理職としてのスキルを
先ほどもお伝えした通り、職人としての技術は確かでも、伝えることや連携、組織を動かすことには不器用なリハビリチーフも多いように思います。 特に在宅医療などでは、他部門との連携が必要であり、時代の変革期で、即時に横断的組織を動かせるリーダーが育ってほしいと思っています。
また、リーダー(マネージャー)とは、組織の成果(あらゆる質の向上)に責任を持つ人です。それを実現するためには、「方向性を示す(メンバーや組織を導く行動力)」力のリーダーシップと、「設定した目標に沿って組織を運営する」マネジメントの力の2つのスキルを向上させることが部署の発展、組織の発展として重要です。実現していくリーダーのスキルは職種に関係なく共通です。少しでもそのようなリーダーが育ってくれることを期待しています。そして、結果的に高い質の医療・介護が地域へ提供ができ、それが、健全経営にもつながり、職員の生活を守ることができます。
◎本サイトに期待することがあればお話しいただけますか。
新米のセラピストリーダーが情報収集出来たり、先輩セラピストの金言(アドバイス)が見ることができたり、これで良かったんだとホッとできるような内容や座談会なども取り入れてほしいと思います。
◎全国のセラピストリーダーに応援メッセージをお願いします。
これからは、セラピストに期待されることはどんどん増えていくと思います。一人の患者、利用者の幸せを追求することはもちろんですが、リーダーとして、あらゆる力を発揮することで、個人にとどまらず、チーム単位で、多くの患者、利用者へ寄与することが出来ます。
これは、リーダーとしてそのように組織を成長させることと、その実感で、とてもわくわくする活動です。リーダーシップには、専門的技術以外は全て共通のスキルです。今後、リーダーとしてのさらなるスキルを磨き、社会に役立つシステムの構築、社会に役立つセラピストの輩出を目指してください。
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”リーダーは、「方向性を示す(メンバーや組織を導く行動力)」力のリーダーシップと、「設定した目標に沿って組織を運営する」マネジメントの力の2つのスキルを向上させる人であること”
久保田さんご自身が、実践してこられたマネジメントから説得力のある言葉でした。
久保田さん、お忙しいところインタビューに応じてくださいまして、ありがとうございました!